【ハラスメント研修】弁護士の先生と代表の岡村で医療法人様向けの「ハラスメント × EQ研修」を実施しました。

「ハラスメント研修、一応やっています」と話す経営者が増えました。

しかし、ハラスメントが減っているかというと──現実はそう単純ではありません。法律の整備が進んでも、職場での人間関係のあつれきはなくなりません。

先日、弁護士によるパワハラ・セクハラの法的解説と、EQ(感情知能)専門家による組織風土づくりを組み合わせた研修を、医療法人様向けに実施しました。そのエッセンスをお伝えします。

受講者の声──事前・事後アンケート結果

まず、研修受講前と受講後で受講者の意識がどう変化したかをご紹介します。今回ご覧いただくのは、研修当日のリアルな数値・コメントです。

全体サマリー

ハラスメント×EQ研修 アンケート全体サマリー

設問1:ハラスメント関連の意識・行動

以下の4項目を、研修前後で5段階(1:まったくそう思わない 〜 5:強くそう思う)で評価してもらいました。

  • A1. 自分の言動がハラスメントになりうることを、日頃から意識している
  • A2. 感情的になったとき、言動をいったん止めることができる
  • A3. 部下や同僚のストレスサインに気づくことができている
  • A4. 職場で「言いにくいことを言える」雰囲気があると思う

設問1の事前・事後アンケート結果

設問2:EQ(感情マネジメント)に関する意識

こちらも研修前後で5段階評価。EQの基本要素にあたる3項目を聞きました。

  • B1. 自分がいま何を感じているか、気づくことができる
  • B2. 感情が高ぶった状況でも、適切に対応できる自信がある
  • B3. 感情をポジティブな行動に活かすイメージが持てる

設問2の事前・事後アンケート結果

研修満足度

研修満足度の結果

受講者コメント

受講者からのコメント

受講前は「指導とハラスメントの境界がよく分からない」という声が多かったものの、受講後には 「日々の小さな関わり方を見直したい」「明日から1on1で意識して聞いてみる」 といった具体的な行動変化のコメントに変わりました。

なぜ今、この研修が必要なのか

厚生労働省は2020年に大企業でパワハラ防止措置を義務化。2022年4月からは中小企業を含む全ての職場に拡大しました。現在はさらに、求職者・内定者へのハラスメント対策、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応まで、企業に求められる範囲は広がり続けています。

しかし、義務化に対応するための「形式的な研修」だけでは、ハラスメントは根絶できません。なぜなら、ハラスメントの多くは 「何が問題なのか分からないまま行われている」 か、「職場の雰囲気そのものが生み出している」 からです。

本研修では2つのアプローチを組み合わせました。「法律・裁判例から学ぶリスク管理」 と、「EQ(感情知能)から学ぶ組織風土づくり」 です。

パワハラとは──3つの要件と6類型

労働施策総合推進法に基づき、以下の3要件をすべて満たすものがパワハラとされます。

1. 優越的な関係を背景にした言動

上司からだけでなく、同僚・部下からのケースも含みます。「職場内での影響力」が基準です。

2. 業務上の適正な範囲を超えている

指導・叱責のすべてがパワハラではありません。必要性・相当性を超えた言動かどうかが問われます。

3. 身体的・精神的苦痛または就業環境の悪化

「平均的な労働者」が就業するうえで支障を感じる言動かどうかで判断されます。

重要なのは、「上司だから」「注意しただけだから」では免責にならない という点です。同僚・部下が集団で一人の上司を追い詰める行為も、優越的な関係に基づく言動として認定されうるケースがあります。

厚労省ガイドラインは、パワハラを6つの類型に整理しています。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃(人格否定・大勢の前での叱責など)
  3. 人間関係からの切り離し(無視・仲間外れ)
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害(病気・LGBTなどへの不当な言及)

ただし、これらに「当てはまる行為があった」だけで即パワハラになるわけではありません。業務上の必要性・相当性、就業環境への影響を総合的に判断します。裏を返せば、「指導しただけ」という主観的な判断だけでは守られないということでもあります。

裁判例が示す「グレーゾーン」の怖さ

実際の裁判例を見ると、認定の難しさがよく分かります。

パワハラの事例では、情報システム部の部長が部下に対し、

「やめさせたるぞ」
「今期赤字ならどうなるかわかるやろ」

と日常的に繰り返し、会議後に椅子の足を蹴る、新入社員の前で「こいつらは無能な管理職だ」と発言するといった行為がパワハラと認定されました。一方、「3コール以内に電話に出ること」という指示は、業務上の指導として相当の範囲内とされ、パワハラに該当しないと判断されています。

セクハラの事例では、医療法人の理事長が事務職員に対して業務中に繰り返し身体的接触を行った事案で、理事長側は「スキンシップの一環」と主張し、目撃者もほとんどいませんでした。しかし裁判所は、被害者が送ったメッセージや他スタッフへの影響などを総合的に評価し、証拠が乏しいにもかかわらずセクハラを認定。さらに 会社(法人)側が複数回の相談を受けながら十分な対応を取らなかったこと も重く評価され、会社の使用者責任も認められています。

裁判例はあくまで事案ごとの個別判断です。「同じ行為をしたからセクハラになる」とも言えませんし、「裁判にならなかったからOK」とも言えません。

どこまでがギリギリOKかを探るよりも、万が一問題が起きたとき「会社として適切な対応をしていたか」という事実を積み上げることが、本質的な対策になります。

企業が今すぐやるべき措置

厚労省は、企業が実施すべき措置を明示しています。

  • 方針の明確化と周知・啓発(研修の実施を含む)
  • 相談窓口の設置(社内外・弁護士活用も選択肢)
  • 事実確認と迅速な対応(相談を放置・揉み消しすることは会社の責任を加重させる)
  • プライバシーへの配慮と不利益取り扱いの禁止

厚労省「明るい職場応援団」サイトには、社内アンケートや相談受付表のひな形が無料でダウンロードできます。自社の状況に合わせてアレンジして活用するのがおすすめです。

EQで「感情の取り扱い」を変える

ここからは研修の後半、EQ(感情知能)の視点です。

ハラスメントは、悪意を持った人だけが起こすわけではありません。むしろ 「自分は正しいことをしている」「昔からこうやってきた」 という、感情の取り扱いの未熟さから生まれるケースがほとんどです。

EQ(Emotional Intelligence Quotient=感情知能指数)とは、感情を認識・活用し、より良い行動とマネジメントにつなげる力です。ハーバード大学の研究では、仕事における成果の80%以上がEQに関連している とされています。知識やスキルだけでは組織は動かせない──それを数値が示しています。

たとえば、部下が5分遅刻してきたとします。「自己管理できないのか」という思い込みから怒りが先に立つと、無視・嫌味・大声での叱責へと向かいがちです。一方、「何かあったのかな」という好奇心が先に立てば、まず理由を聞くという選択ができます。

この 「本能的な反応」から「知的な選択」へのシフト がEQの核心であり、ハラスメントの多くはこの一瞬の分岐点で生まれます。

EQを構成する能力は、感情リテラシー・自己パターンの認識・結果を見据えた思考・感情のナビゲート・内発的モチベーション・楽観性の発揮・共感力の活用・ノーブルゴールの8つです。これらはすべて 後天的に鍛えられる スキルです。

組織のEQ──心理的安全性と組織風土の5要素

個人のEQが集まると、組織の風土が形成されます。組織EQは5つの要素で構成されます。

1. 信頼

情報の透明性、団結力、心配り。

2. モチベーション

自発性、仕事の意味、主体性。

3. チームワーク

心理的安全性、多様な意見の尊重。

4. 実践行動

役割と責任、フィードバック。

5. 変化対応

挑戦、学習、イノベーション。

この5要素は連動しています。信頼が崩れると、モチベーションが下がり、チームワークが崩れ、実践しなくなり、変化に対応できなくなる──という負のスパイラルが起きます。逆に言えば、一つを改善すると全体が連動して変わります。

なお、組織風土が一度定着すると、変えるのに約2年かかると言われています。「なんとなく雰囲気が悪くなってきた」と感じたら、早めに手を打つことが重要です。

今日から始める3つのアクション

1. 相談窓口の整備と「記録する」習慣

相談担当者を事前に決め、「何かあればここへ」という導線をつくります。重要なのは対応後の記録です。「こういう事実確認をした」「こう対処した」という記録の積み重ねが、万が一の訴訟リスクを大幅に下げます。外部弁護士を窓口に活用する企業も増えています。

2. 管理職向け「感情の取り扱い」トレーニング

ハラスメントを起こしやすい管理職に多いのは、EQの「自己パターン認識」が低いケースです。自分がイライラしたときにどう行動するかのクセを知るだけで、言動は変わります。管理職研修にEQプログラムを組み込むことが、最も費用対効果の高い予防策の一つ です。

3. インシビリティ(小さな不快感)から改善する

「挨拶をしない」「話を最後まで聞かない」「不機嫌をまき散らす」といった小さな無礼な言動の積み重ねが、職場の空気を悪化させます。大きな問題が起きる前に、日常の小さな不快感を減らしていく文化が、ハラスメント防止の土台になります。

— Free Material

研修当日に使用した解説資料(PDF)

パワハラの3要件・6類型/実際の裁判例/EQ8コンピテンシーの解説/組織EQ5要素のフレームワークなど、当日のスライドをまとめた完全版資料を公開しています。社内のハラスメント研修・相談窓口設計の参考に。

▶ 資料をダウンロードする

明日からの一歩

社内で「ヒヤッとした言動」を最近見聞きしたか、まず自分の周りを見渡してみてください。気になる場面が一つでもあれば、その場で対応するのではなく、まずは記録に残す。

それが、組織を守る最初の一歩になります。

法律の整備と、感情・組織文化のアプローチは、車の両輪です。どちらが欠けても、ハラスメントのない職場は実現しません。

Edumuse株式会社では、「法的リスク管理」と「EQによる組織開発」をワンストップで 実施するハラスメント予防研修を提供しています。2026年10月のカスハラ義務化対応にも対応中です。

ハラスメント予防研修の詳細を見る
無料で相談する

PAGE TOP